fc2ブログ
05.10
Mon

中学1年生の運動会。私はリレーのアンカーだった。
別のチームのアンカーには、小学校からいっしょのAちゃんがいた。
私は小学校のときにAちゃんのこすいところを見てから、Aちゃんのことが好きではなかった。
バトンがAちゃんに1番に、私にはビリで渡ってきた。
バトンを受けとると、私はものすごく速く走った。
絶対にAちゃんを抜かす、と心の中でつよく思っていた。
他のチームの子たちをつぎつぎに抜かし、カーブを曲がり、直線にはいって、距離はぐんぐん縮まって、気がつけばAちゃんの背中はもうすぐ目の前にあった。
このまま走れば抜かせる、そう分かった瞬間、私の中で信じられないようなことが起こった。
まるで雷に打たれでもしたかのように 「もう抜かさなくてもいいんだ」 という想いが私をつらぬいたのだ。
そして、その一瞬の光に照らし出されるように、わーわーと応援しているチームメイト ⦅1番でゴールしたらみんな喜ぶだろうな⦆ や、大きな声で 「逃げ切れー!」 と叫んでいるAちゃんの担任の先生 ⦅私はこの先生のことも好きではなかったから、抜かした方が気分はいいだろうな⦆ とか、このリレーを見ているたくさんの人たち ⦅ここで失速したら、はじめにスピードを出しすぎて力がなくなったと思われるだろうな⦆ とか、そんなことが全部見えた。
そんなことが全部見えて、それでも、それでもやっぱり自分の中に閃光のように起こった想いがとてもつよくて、私は瞬間的にAちゃんを抜かさない程度にスピードを落として、2番でゴールしたのだった。
こんなこと、チームメイトや友達には言えないし、説明もできない。
だから誰にも言わずに、ただ雷に打たれた跡がのこるような鮮烈な印象と、不思議だった気持ちとを、この年になるまでずっと持ちつづけていた。
なにかの折に思い出しては、あれは何だったのだろうと考えていたのだけれど、なんだか今は、とても私らしい象徴的な出来事だったような気がしている。




comment 0
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top