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04.27
Tue
春の陽に光る、うすく透きとおった月桂樹の若葉を見ていると、去年の7月頃の記憶が浮かんできた。

私は、しっかりと分厚くなったのを指でたしかめながら、月桂樹の葉を摘み取っていた。
すると後ろから「剪定しとるん?」と、近所のおばさんが声をかけてきた。
このおばさんには、私には見えないものが見えている。
いつも、見えないものたちに向かって、怒りながら歩いているおばさんだ。
怒っている様子しか見たことがないし、挨拶することはあっても、話しかけられるなんて初めてのことで、私は驚きながら「うん。」と答えた。
これからどこかへお出かけなのか、いつもより身ぎれいな様子をしている。
興味深そうに、私のプランターの植物たちをぐるりと見回してから、「トマトがなっとるやん!」と言う。
そうそう、これは初めて種を蒔いて、種から芽が出て、育って、実をつけてくれたトマトなので、私も嬉しくて「そうなの!」と笑顔で返したのだ。
そしたら、「ふーん。楽しみやね。」と言ったおばさんの顔が、にっこりと、、そう、にっこりと笑ったのだ。
私はもうびっくりしてしまった。
だってその笑顔がとてもキラキラしていて、「えー!?そんな綺麗な顔で笑えるんだったの!?」という驚きと、予想外のあまりの出来事に、おばさんが行ってからも、しばらくぼんやりしてしまった。

あれからも、おばさんはやっぱりいつも何者かに怒りながら歩いているし、笑っている顔も見たことがない。
だけどあの時の綺麗な顔は、今もちゃんと私の中にのこっていた。




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