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11.29
Mon
丘のてっぺんの木々の横に小さく口を開いた細い小道への入り口。
草木にかこまれた入り口の向こうはトンネルのようで薄暗い。
以前丘で野犬に出くわしたとき、犬は私の姿を見るとこの小道へと姿を消した。
いつも気になってはいたのだけれど、なんだか気軽な気持ちでは行けない印象で、私はまだ一度も足を踏み入れたことがなかった。

ところがその日はどういうわけか、その小道を行ってみる気になった。
足が自然とそちらに向かい、なんの躊躇いもなく入り口から小道へと足を踏み入れた。
歩いてみると、人が頻繁に通るようなところでもないのに、手入れがされている様子でとても歩きやすい。
歩くたびに枯葉が乾いた音をたてる。
この道はどこにつづいているのだろう。
海に出るのか、造船所に出るのか、と思って歩いていた。
そしたらふいに小さな墓地に出た。
もうずいぶん前に供えられたであろう花が朽ちている。
もう訪れる人もあまりいないのだろう。
お墓の横を通ってさらに行くと、古い小さな神社があった。
神社の様子を見ているうちに記憶が蘇ってくる。

以前友人と散歩をした。
友人がやっている畑やその周りの入り組んだ道を、おしゃべりしながらのんびり歩いた。
そのとき友人が「古くて小さな、もう誰も訪れていないような、だけど感じのいい神社を見つけた」と言って、その場所へ連れていってくれた。

ここは、あの神社ではないか。
そう思ったとき、私の中でなにかが動いた。
私がいつも登る丘と友人の畑のある場所は、もちろん近所ではあるのだけれど、どこか離れた別の場所だと思っていた。
なんというか、どこかで切り離されていた。
それが今、私の中でひっくり返った。
この小さな古い神社が、離れていたふたつの場所が本当はつながっていたことを、確かに私に示している。
ただ私が気がついていなかっただけなのだ。
私の頭の中の地図が小さすぎて、切り離していただけなのだ。
この神社はいつだってここにあったし、こっちの道とむこうの道はいつだってつながっていたのだ。
なんだかとっても大袈裟なようだけど、距離的にも空間的にも離れていたもの、なにかを隔てた向こう側にあったものとつながったような、そんな衝撃だった。

ドキドキしながら来た道を戻っていく。
はじめて足を踏み入れた小道は、通ったことのある道になっている。
入ってきた入り口から丘のてっぺんに出たとき、とても明るく景色がひらけた。





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