向島でお店をはじめてから、よく花をプレゼントしてもらうようになった。
お店に来る道すがらに摘んできた草花や、お庭や畑に咲いた花のお裾分け。
スノーフレーク、ムスカリ、紫陽花、露草、フェンネル、時計草、、、
そんな季節の草花がお店を彩ってくれる。
なんて嬉しいことだろう。
この5月、6月は、お店によく薔薇が咲いていました。
ピンクの薔薇。
薔薇をプレゼントしてもらうなんて、生まれてはじめて。
蕾がみっつ。
どれもふんわりとほころんで、ちょっと頬を赤らめて微笑んでいるような、可愛らしい姿。
このあいだ蕾の状態でもらったのは、花瓶のお水だけでは何か足りなかったのか、蕾が濃く色づきはしたものの開かなかった。
それは伝えていないはずなのだけど、こんどは少し開いた状態のをもってきてくれた。
数日後、みっつとも同時に満開になる。
なんとも優雅。
水色の瓶がとてもよく似合っている。
花の命は短くて、と言うけれど、数日したらもう朽ちかけて、花びらは今にも蕚から離れ落ちそう。
そんな薔薇の隣に座っていると、ふいに甘い香りがふうっと香ってくる瞬間がある。
風も吹かないのに。
何回も、そういう瞬間がある。
薔薇からふうっと放たれるこの香りは、綺麗に花を咲かせきって、朽ちる直前の、薔薇の綺麗な深い溜息のようなものだろうか、と思う。
翌朝、テーブルの上にピンクの花びらが2枚。
朝ごはんを食べたり、洗濯物をしている間に、その数はどんどん増えていく。
私はまた薔薇の隣に座って、薔薇が散りながら甘い溜息をもらすたびに、深く息を吸いこむ。
お店に来る道すがらに摘んできた草花や、お庭や畑に咲いた花のお裾分け。
スノーフレーク、ムスカリ、紫陽花、露草、フェンネル、時計草、、、
そんな季節の草花がお店を彩ってくれる。
なんて嬉しいことだろう。
この5月、6月は、お店によく薔薇が咲いていました。
ピンクの薔薇。
薔薇をプレゼントしてもらうなんて、生まれてはじめて。
蕾がみっつ。
どれもふんわりとほころんで、ちょっと頬を赤らめて微笑んでいるような、可愛らしい姿。
このあいだ蕾の状態でもらったのは、花瓶のお水だけでは何か足りなかったのか、蕾が濃く色づきはしたものの開かなかった。
それは伝えていないはずなのだけど、こんどは少し開いた状態のをもってきてくれた。
数日後、みっつとも同時に満開になる。
なんとも優雅。
水色の瓶がとてもよく似合っている。
花の命は短くて、と言うけれど、数日したらもう朽ちかけて、花びらは今にも蕚から離れ落ちそう。
そんな薔薇の隣に座っていると、ふいに甘い香りがふうっと香ってくる瞬間がある。
風も吹かないのに。
何回も、そういう瞬間がある。
薔薇からふうっと放たれるこの香りは、綺麗に花を咲かせきって、朽ちる直前の、薔薇の綺麗な深い溜息のようなものだろうか、と思う。
翌朝、テーブルの上にピンクの花びらが2枚。
朝ごはんを食べたり、洗濯物をしている間に、その数はどんどん増えていく。
私はまた薔薇の隣に座って、薔薇が散りながら甘い溜息をもらすたびに、深く息を吸いこむ。
目が覚めて時計を見る。
まだ四時半にもなっていない。
薄い布団を首までかけ直してくるまってみるけど、やっぱり腕のあたりと足首のあたりがすうすうして、眠れそうにない。
断熱性の低い屋根と薄い壁が、日中の太陽の熱を部屋にため、夜をかけてようやく熱が冷めたら、こんどは肌寒くなるのだから、困ったもんだ。
天井裏だか屋根の上だかで、ドタッバタッと大きな音がして、思わず「わぁ」と声が出る。
外のほの白さがカーテンの隙間に靄のように見える。
ティティティン、テュテュンと一番鳥が鳴いている。
誘われるようにカーテンを開ける。
風のない、鏡の海に、光の柱が何本もゆらめき立っている。
神秘的な深みをたたえた空は、やさしく、淡く、澄んでいる。
私の好きな春の宵の空に似ている。
華奢な月が弧を左下にして、斜め向かいの屋根の上にちょうど佇んでいる。
途切れることのない一番鳥の声は、まるで目の前の空から降ってくるように大きく響く。
肌寒い空気。
五時頃、煌々とした太陽が山の向こうから現れ出る。
赤い夏の太陽だ。
まだ四時半にもなっていない。
薄い布団を首までかけ直してくるまってみるけど、やっぱり腕のあたりと足首のあたりがすうすうして、眠れそうにない。
断熱性の低い屋根と薄い壁が、日中の太陽の熱を部屋にため、夜をかけてようやく熱が冷めたら、こんどは肌寒くなるのだから、困ったもんだ。
天井裏だか屋根の上だかで、ドタッバタッと大きな音がして、思わず「わぁ」と声が出る。
外のほの白さがカーテンの隙間に靄のように見える。
ティティティン、テュテュンと一番鳥が鳴いている。
誘われるようにカーテンを開ける。
風のない、鏡の海に、光の柱が何本もゆらめき立っている。
神秘的な深みをたたえた空は、やさしく、淡く、澄んでいる。
私の好きな春の宵の空に似ている。
華奢な月が弧を左下にして、斜め向かいの屋根の上にちょうど佇んでいる。
途切れることのない一番鳥の声は、まるで目の前の空から降ってくるように大きく響く。
肌寒い空気。
五時頃、煌々とした太陽が山の向こうから現れ出る。
赤い夏の太陽だ。