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09.28
Sat
秋になりました。
10月の予定です。


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10/6(日)は「おのみち家族の台所」に出店します。

カヌレ、チーズケーキ、マフィン、タルトなど、焼き菓子いろいろ持って行きます。

(お持ち帰りされる方は、容器や袋の持参に、ご協力していただけると助かります。)


会場 尾道商業会議所記念館広場
時間 10:00~15:00


・・・・


「この猫じゃらしは願いを込めて海に投げよう。」

「どんな願い?」

「猫じゃらし君が素敵な家をつくるってゆうのはどう?」

新幹線に乗り、渡船に乗ってやって来た、夏休みの少年がのこして行ったことばを、

ときたまぼんやり想ったりしている。


・・・・

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09.25
Wed

その家の窓に、いつもおばあさんの姿が見えました。
おばあさんは、窓辺の椅子に腰掛けて、いつも針仕事をしているのでした。
窓から入る太陽の明るさが、目の見えずらくなったおばあさんの針仕事の手元に、調度いい具合なのでした。

空が青く、高く澄んで、風が吹く、午後のことでした。
吹き抜ける風に身を任せたように、空には薄い雲が長く伸びていました。
おばあさんも窓を開けて、かわいた風に当たりながら、いつものように針仕事をしていました。

そこへ、ひとりの若い女が、おばあさんの居る窓辺を訪ねました。
「おばあさん、こんにちは。」
「はい、こんにちは。」と見知らない若い女に、おばあさんも挨拶をしました。

「私は、通りから、いつもここで針仕事をするおばあさんの姿を目にしていました。
 その姿が、ゆったりと、いかにも気持ち良さそうなので、いつも羨ましく見ていたのです。」
「あら、あら、そうでしたか。」とおばあさんは答えました。

若い女はつづけました。
「そこで、私も、針仕事を始めてみようと思いたったのです。
 針仕事をしたら、きっと、おばあさんのように、ゆったりと、落ち着いた気持ちになれるだろうと思ったので
 す。」
おばあさんは、やさしく微笑みました。

それから、すこし間を置いて、若い女は、声の調子を強くして言いました。
「ところが、いざ始めてみたら、落ち着くどころではありません。」
おばあさんは、目を大きくしました。

「ひと針ひと針があまりにも小さくて、いっこうに前に進まないのです。
 もどかしくて、気持ちが急くのです。そして、永遠に終わりがなく、縫い続けなければならない気がしてくる
 のです。」
おばあさんは、だまって聞いていました。

「刺さなければならない小さな穴が、無数に私を待ち構えていて、それを思うと、恐ろしくなって、手が震える
 のです。」
そう言う、若い女の声も少し震えていました。

おばあさんは、やっと、「そうですか。」と静かに答えました。
「どうやら針仕事は、私には向いていないようです。」そう言って、若い女は行ってしまいました。


その晩、おばあさんは、まだ窓辺の椅子に腰掛けていました。
窓の外の茂みからは、虫の音が響き、月が黒い空に白く光っていました。

おばあさんは、もうすっかり身に染みてしまった針仕事のことを想いました。
心を向けて、思うところに針を刺し、思うところから針を出す、おばあさんは、ずっとそれを繰り返してきました。
大きな布を広げても、おばあさんを脅かすものはどこにもありません。

夜の空気がひんやりと窓からしみてきて、おばあさんは、両方の手をひざ掛けの中に包みました。
おばあさんの小さなひと針が繋がってできた古いひざ掛けは、月夜の窓辺で、目には見えない気配のような美しさを漂わせて、おばあさんを幸福な気持ちにさせました。

うっとりとした気持ちでいると、虫の音が、まるで子守唄のように流れてきて、おばあさんは棚の時計に目をやりました。
棚の置き時計の下にも、薄い絹の敷物が、同じく時を刻んでいました。
「ああ、もうこんな時間。」
おばあさんは、重い体を、窓辺の椅子からゆっくりと持ち上げました。
「きっとあなたも同じことですよね。」
白く輝く月に独り言ちて、おばあさんは布団にゆきました。


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