
おべんと御飯(煎り卵ともみ海苔の混ぜ御飯)か、猫御飯(おかかと海苔を御飯の間に敷いたもの)であれば、私は嬉しい。
それまでゆっくりと上下し続けていた私の目玉は、この一文でピタリと止まり、
銀色のお弁当箱の蓋を開けたときの、散りばめられた黄色、ふわりと鼻をかすめる海苔の香り、
いたってシンプルなんだけどなんとも言えないおいしさがあるそのお弁当をどうしても食べたくなった。
本を置いて、自転車を走らせたお店の、前にいちど見かけて、欲しいと思っていたお弁当箱は、
よく見てみるとつなぎ目だらけの小物入れの缶からだった。